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 職務発明と職務著作(11)「青色LED事件(その5)」
 
 最後に青色LEDに関連して、下記に取り上げる二つの事項については知っていて頂きたいと思います。
 まず一つ目。
 中村教授はカルフォルニア大学のサンタバーバラ校の教授として米国に渡りましたが、米国の教授の立場は日本の教授の立場とは全く異なります。

 大学からは準備金の様なものは支給されますが、サンタバーバラ校では日本の様ないわゆる一律の給料等はないそうです。

 自分でお金を集めなくては自分自身がご飯を食べることができませんし、研究材料も買えませんし、スタッフも雇えません。

 実力のない教授のところにはお金が集まりません。お金が集まらないと、やがて大学教授ご本人が大学を去らなければなりません。

 中村教授が個人的に調達しなければならない資金は、年間1億円程度とのことです。このことは知っておいて欲しいと思います。中村教授の場合、数億円貰って喜んでいる場合ではないようです。これが一つ目です。

 誰からも給料を貰うことなく、年間1億円の資金調達をやってのける研究者は日本にどのくらいいるのでしょうか。

 それから、今回の東京高裁の和解で中村教授が得た金額は低い、高い等、様々な表現がありますが、

(1)青色LEDの技術的価値
(2)青色LEDに係る一特許権の価値
(3)青色LEDに係る特許権に関する職務発明についての相当の対価

 この三つは根本的に異なりますので、この点に注意して頂きたいと思います。これが二つ目です。

(1)は将来に亘って計測可能な価値であるのに対し、(2)は、中村教授の手を離れたところで決定される面もあるため、特許部員や明細書作成員の技術いかんによっては即座に無価値になることもあり得ます。また、(3)は(2)の事情に加えて、個別の企業事情が考慮されますので、企業の経営力等に大きく左右される一指標との位置づけになります。(3)の対価と(1)の価値とを混同して議論しない様に注意したいですネ。


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