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  権利の共有(6)「きやんでいい」(来なくて良い、との関西風方言)

 「キャンディ・キャンディ」事件では、原作者がストーリーを組み立て、漫画家がそれをもとにイラスト(漫画)を作製し、出版社員がそれを調整するという役割分担を行いながら作品が完成されていきました。

 漫画家の許諾の下、「キャンディ・キャンディ」に登場する主人公の女の子のキャラクター商品をお菓子屋さんから発売したところ、原作者から「ちょっと待った!」と裁判を起こされてしまいました。

 裁判における争点は次の通りです。
(1)漫画家が描き出した漫画の主人公の女の子を、ストーリーを離れて利用する行為が、漫画を描いた訳ではない原作者の著作権の権利侵害となるかどうか。

(2)漫画家から実施許諾を受けたお菓子屋さんが責任を負うべきかどうか。

 漫画家の感覚からすれば、原作「キャンディ・キャンディ」の漫画の中のストーリーに関係する部分、例えば言葉を発する部分については確かに原作者との何らかの権利関係が生じることはあるかもしれないけれど、主人公の「キャンディース・ホワイト」そのものを描いたのは漫画家自身であり、ストーリーと離れてそれを利用する行為について原作者からあれこれ言われる筋合いはない、と感じたのではないでしょうか。

 また、お菓子屋さんとしても、実際にその漫画を描いている漫画家本人の許諾を受けて商品を販売しているわけですから、そのこと自体を訴えられるのは心外と感じたことと思います。

 *   *   *   *   *

 東京地裁では、原作者のストーリーを原著作物とし、漫画家のイラスト(漫画)を二次的著作物と認定しました。漫画はストーリー展開、登場人物等の諸要素が不可分一体のものとして有機的に結合した著作物であり、主人公の絵を抜き出して利用する行為に対し原作者は損害賠償を求めることができる、としたのです。

 また、お菓子屋さんの責任ですが、東京地裁は、漫画の主人公の女の子の絵を使用することについて、著作権上の問題が生じないかどうかを、事業の遂行に当たり自己の責任において判断すべきとしています(関係ないとはいえませんよ、ということです。)。

 参考)東京地裁11年(ワ)8471


 漫画家やお菓子屋さんはどうすればよかったのでしょうか。
 これについては次回で。


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